LWFの歴史 リングス・オランダ

リングス・オランダ大会 2000.06.04

4月にリングスの山本宣久とキング・オブ・パンクラスのセーム・シュルトの試合が決定した。舞台はオランダのウトレヒト。まさか、こんな豪華な試合が組まれるなんて・・。

私は半信半疑だった。しかし、この世紀の一戦を見逃したら、私は一生後悔する。早速、航空券とリングス・オランダのチケットを確保した。

6月4日の試合当日になっても、山本とシュルトの試合が本当に行われるのか、私の中で疑いが続いていたが、会場入りする時に、貼ってあったポスターにファイティング・ポーズを取る山本とシュルトの姿が並んでた。それを見て、世紀の一戦が間近であることを認識した。

試合開始前は会場内の5つのモニターに前回2月の大会の模様が映し出されていた。ヨープ・カステルをしばくギルバート・アイブル、滑川を威嚇するピータースの姿が映し出されるが、彼らはもうPRIDEの選手である。なんだか寂しさが湧いてきた。

リングの周りを見ると、クリス・ドールマン、アーネスト・ホースト、ジェラルド・ゴルドーが友人に挨拶をしている。おや、前田社長もいるではないか!ファンの人達と写真撮影をしていた。そして、照明が落ち、ビデオ・クリップが再び流され、全選手入場で大会が始まった。

第一、第二試合は省略。

第三試合
Renaldo Rijkhoff vsSander Mackilljan
Renaldoのセコンドには、K1でよく見かけるはげ頭でポニーテールの人(チャクリキ会長?)とハンス・ナイマンが付いていて、Sanderのセコンドには、昨年のK1覇者、アーネスト・ホーストが付いている。

Sanderってナイマン・ジムじゃなかったっけ?とにかく、セコンドの豪華な顔ぶれで、試合への期待が高まった。Renaldoも実力者だったが、Sanderのパワーが圧倒する。サンダーの上背を活かしたパンチ(まさに2階からのパンチ)でRenaldoをKO。サンダーの試合は圧勝が多い。もう少し実力のある選手とやらした方がいいのではないか。

第四試合も省略。

第五試合
Jeffrey Heijm(チャクリキ) vs Stephan Tapilatu
Jeffreyは名門、チャクリキ・ジムの選手。しかし、私がチャクリキ会長だと思ってた人はセコンドにいない。やっぱり間違いだったかな?

まぁ、それはいいとして、試合の方は、StephanのキックがJeffreyの顔面に面白いように入るが、Heijmもなかなかタフで倒れても、起き上がって来る。試合は判定に持ち込まれるが、明らかにStephanが判定勝ち。

第六試合
Fatih Kocamis(ドイツ) vs Valentijn Overeem
オーフレイムの攻めあぐむ姿が度々、見られた。試合はKOで勝ったのだが、前回の金原戦で負けを喫したり、今年のオーフレイムは調子悪いのかな?一時期のような圧倒的な強さが見られない。

第七試合
Glenn Brasdorp vs Big Mo T
パンチを浴び、Mo T失神。白目をむいて動けず、かなり危ない状況に陥った。

第八試合
Jerrel Venetiaan vs Dave v/d Veen
Jerrelのローキックが有効打となり、2回のダウンを奪う。しかし、タフガイのDaveは判定まで持ち込む。Jerrelの判定勝ち。

第九試合
Joop Kasteel vs Lee Hasdell

日本でもお馴染みの2人が登場。カステルの人気は相変わらず凄い。
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どうやら彼の愛称は「ヨーピー」らしい。カステルを見たら、ヨーピーと声を掛けましょう。そのヨーピーはゴングが鳴ると同時に猛ラッシュ。

パワーでリーを攻め込んでいく。しかし、冷静なリーは隙を見て、ヨーピーに右ストレート。すると、ヨーピーはダウン。

気を取り直したヨーピーは相変わらずのパワー殺法を仕掛けていく。反撃が物凄い。大迫力の右ストレートがリーの顔面に決まった。すると、リーはうずくまる。レフリーはパックリと割れた額の傷口を見るや否や、ゴングを要請。ヨーピーがレフリー・ストップで勝利。

第十試合
Peter Verschuren vs Rob Van Esdonk
今大会のセミファイナル。前大会のセミ同様、両選手がどんな人なのか筆者はよくわからない。どっちが勝ったのかもわからない。多分、Robだと思うが・・。あぁ、情けない・・。

決まり手は羽折り固めみたいな技。試合終了後、勝者のセレモニーがあり、勝者の妻や娘が勝者を祝福したり、ドールマンがお祝い(?)のメッセージと共に、認定書みたいなものを渡していた。オランダ語はさっぱりわからない。あぁ、誰か助けて~。

第十一試合
Yoshihisa Yamamoto vs Sem Schilt
この試合をリングスとパンクラスの団体間の戦いに見立てている人は少なくないはずだ。

筆者もそんな内の一人だった。私はパンクラスの試合を見る機会がほとんどなかった分、リングスの方が多少、思い入れがあったため、山本が勝つ事を願っていた。

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山本は前田の引退試合を務めたリングスのエースの一人。一方、シュルトはキング・オブ・パンクラシスト。昨年、ギルバート・アイブルがシュルトをKOした瞬間、リングス・ファンは歓喜の声を挙げたと思われるが、純粋なリングス戦士である山本がシュルトに勝ってこそ、リングス・ファンは喜ぶべきだろう。

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そんな二人の戦いをリング・アナウンサーもリングスとパンクラスの戦い、あるいは日本で実現不可能な試合とオランダの観衆に紹介し、盛り上がりを図っている。

そして、山本が先に入場。セコンドには高阪がいる。リング前にたどり着くと、ひざまずいて両手を合し、お祈りを捧げる。30秒ぐらい、お祈りが続いた。そして、リングインすると、アナウンサーからコールを受ける。次に、シュルトが入場。デ、デカイ。私は写真を撮ったが、シュルトの頭がフレームアウトしてしまった、と思った。

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そして、リング上で両者、対峙する。山本のセコンドには前田氏もついていて、いろいろとアドバイスを送っている。その姿を見て、まさに団体対抗戦の図式が出来上がった。そして、山本のプレッシャーも想像以上のものだろう。一方のシュルトは地元であるからか、リラックスしているように見える。

ゴングが鳴り、お互いに距離を探る。特に、山本は慎重だ。軽い蹴りなどで威嚇するが、徐々にシュルトの蹴りが山本を捕らえていく。膝蹴りが山本に命中。山本はダウン。

なんとか立ち上がり、試合再開。シュルトは猛ラッシュを仕掛けていく。膝がもろに山本の顔面に当たった。2度目のダウン。と同時に、高阪からタオルが投げられる。えー、うそ~。山本、全然良い所なかったよ。私はしばらく、あっけに取られた。観客もあっけに取られている。試合は2分ぐらいで終わった、と思う。

前田氏や高阪が倒れた山本を介抱している。山本のアップがモニターに映し出されると、山本の額がパックリと割れていた。背筋がゾッとした。そして、負け方が良くなかった(完敗)ために、がっかりした。

山本にあんな風に勝てる者はリングスにはいない。リングスはパンクラスに負けた、と思った。シュルトの膝蹴りはまさにリングス・ファンに対する 「目を覚まして下さい」キックだった。とにかく、リングスはやられた、と思った。

しかし、その対抗戦意識も違う方向に移って行った。私の隣で、オランダ人のファンが冷笑している。

「あんな弱い日本人、メインの顔ではないよ。」オランダ語がわからない私は勝手にそう捕らえた。リングスとパンクラスの対抗戦図式なんて、ちっぽけな考え方だ。私の中で、日本人がオランダ人に負けた、という意識が芽生えてきた。会場にいる私もなんだか居心地が悪くなってきた。当たり前だが、負けた山本はもっと悔しいだろう。

日本人はやたらとグレイシーの首を獲ろう、と考えてるが、田村に勝ったアイブル、K1のホースト、アーツ、日本人選手は彼らから本気で勝利を挙げるべきだ。山本がシュルトに負けた。

そうなったら田村でも近藤でも、とにかくシュルトに勝って欲しい。アイブルはPRIDEに移ってしまったが、桜庭や藤田、カシンでもいい。 団体の枠を超えて、日本人の強さを世界で証明してほしい。

もう団体間のいざこざはなしにして、彼らから勝利(ベルト)をもぎ取るべきだ。お互いに協力していかないと、日本の格闘技レベルはどんどんオランダやブラジルに引き離されていくかもしれない。シュルトの膝蹴りは日本人ファン全員に対する「目を覚まして下さい」キックだったのかもしれない。

 

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